研究概要 |
今年度は,研究課題である「ガロア変形の岩澤理論」に関連する複数の研究を並行して行った.箇条的に記すと 1. ヒルベルトモジュラーの肥田変形におけるセルマー群のコントロール定理 2. ヒルベルトモジュラーの肥田変形におけるp進L函数の構成 3. 混標数の完備局所環の様々な素イデアルでの特殊化の振る舞いの研究 などが主なものである.1は0.Fouquet氏との共同研究,2はM.Dimitrov氏との共同研究である.ともにヒルベルトモジュラーの肥田変形に対する岩澤理論の構築のための部分的な問題である.どちらもヒルベルトモジュラーの肥田変形におけるレベル構造の難しさが仕事の鍵となっており,特に2の仕事においては,通常よく用いるGamma_0やGamma_1のレベル構造ではなく異なるレベル構造を用いることが構成の大事なアイデアとなっている.そのような複雑な部分をひとつひとつ書き下している.3における可換環論の研究は,私自身が2005年に出版したオイラー系の理論を変形空間へと一般化した論文"Euler system for Galois deformations"と関係して生じたものである.この論文においては技術的な困難から混標数の完備局所環として正則局所環のみしか扱えていなかった.もっと一般の混標数の完備局所環へと条件をゆるめて応用範囲をひろげたいという動機があった.混標数の完備局所環の専門家である下元氏との共同研究に着手し,そのような目標に近づくであろうBertini型の定理を定式化して部分的な結果を得られつつある.
|