研究概要 |
概均質ベクトル空間とそのゼータ関数を軸に,代数的整数論の研究を行っている.本年度の主な研究成果は以下のとおり. 1.Frank Thorne氏(南カロライナ大)との共同研究で,論文"Orbital L-function for the space of binary cubic forms"を完成して投稿した.これにより,軌道型L関数の概念を具体的に提示できた.また同氏と,有理数体上のS_3-6次拡大体の密度定理について誤差項の改良を行い,第二主要項の予想を定式化した.数値実験との比較で,第三主要項の存在が想像されたことは興味深い.現在論文を執筆中である. 2.Frank Thorne氏(南カロライナ大)及びManjul Bhargava氏(プリンストン大)との共同研究で,相対3次拡大体の判別式の分布に関して誤差項のよい評価を得た.一般の代数体上で精度のよい密度定理が証明できたことは意義深い.現在論文を執筆中である. 3.Arul Shankar氏(プリンストン大)との共同研究で,整係数2元4次形式の類数の平均値について,第二主要項が存在することを証明した.余正則空間でも第二主要項が得られたことは重要である.現在,この項の係数を明示的に計算する研究を続けている. この他,Gautam Chinta氏(ニューヨーク市立大学)と多変数になる概均質ベクトル空間のゼータ関数について研究打ち合わせを行い,いくつか興味深い進展があった.特に,2元3次形式の空間のゼータ関数の主合同部分群を用いたレベル構造つきの族との関係を見出すことができた.次年度以降も内容を発展させていきたいと考えている.
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