不変式論の第一基本定理・第二基本定理のある系列を得た。結果は、多項式環におけるものと外積代数におけるものに大きく二つに分かれるが、どちらもベクトル不変式に関する第一基本定理・第二基本定理の帰結と見なせる。 第一の結果は通常の多項式環における不変式論の結果である。古典群に関する不変式環の8つの系列について、不変式論の第一基本定理と第二基本定理を得た。第二基本定理はSchur多項式を用いた比較的単純な関係式で記述される(ただし現時点では8系列のうち3系列の記述はまだ少し複雑で、Schur多項式の形まで整理できていない)。またこの第二基本定理の背後には高次のCayley-Hamilton定理がある。 第二の結果は、外積代数における不変式論に関するものである。n次の正方行列のなすベクトル空間の上の外積代数にn次の一般線型群が自然にconjugationで作用する。この作用に関する不変元について調べ、次のような結果を得た。まずこの不変元のなす部分代数はn個の元で生成される外積代数に同型となることがわかった。そしてこれらの不変式の生成元を係数とするCayley-Hamilton型の定理を得た。これらは固有多項式に関する初等的な線型代数の結果の反可換版と見なせる。さらにこのCayley-Hamilton型の定理は、Polynomial identityの理論の先駆けになったAmitsur-Levitzki定理の精密化と見なせる。不変式の舞台を取り替えることによりKostantによるAmitsur-Levitzki定理の類似の新証明や、さらに新しいAmitsur-Levitzki型の定理も得られる。以上の結果に加えて、対称式の理論の反可換版に当たるいろいろな結果も得た。
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