研究概要 |
平成22度は,トーリック・2ファノ多様体の分類を主として考えた.トーリック・2ファノ多様体とは,トーリック・ファノ多様体の高次バージョンであり,トーリック・ファノ多様体であることに加えて,第二チャーン標数が非負であるような多様体のことである.トーリック・2ファノ多様体の分類は本研究の直接的な応用であり,大きな目標の一つでもある.平成21年度までに,トーリック多様体上のトーラス不変な2サイクルを扇の組み合わせ論的な情報を用いて表す方法を得ており,更に(トーラス不変な)2コサイクルとの交点数もその表現を用いて具体的に計算可能である.この結果を用いて,低次元のトーリック・ファノ多様体について,第二チャーン標数の非負性をチェックしたのである.その際コンピューターを補助的に用いた.結果として,四次元以下のトーリック・2ファノ多様体をリストアップすることが出来た.この計算において最も苦労したところは,トーリック・ファノ多様体上の有効的2サイクルの数値的同値類のなすコーン,所謂2森コーンを計算して,その端射線を決定するという過程である.この過程は,2森コーンの端射線とトーリック多様体上の射との間の対応を明らかにする,という本研究の別の大きな目標の一つを達成することにより容易になるはずで,次年度以降の課題である.結果として得られた低次元のトーリック・2ファノ多様体の分類結果を考察すると,それらの多様体は特別な射影直線束を繰り返して得られていることが分かる.一般に成立するかどうかは未だ不明であり,これもまた次年度以降の課題である.尚,平成22年度の結果も含めて,論文を執筆中である.
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