研究課題
本年度は、主に、2次元および3次元双曲多様体に関するセルバーグゼータ関数の数論的な記述に関する研究を行った。このセルバーグゼータ関数の数論的な表示は、一般的にはよくわからない、多様体上のlength spectrumの具体的な記述を与えている。現在までに、ある特定のモジュラー群の合同部分群を基本群とするような、2次元の数論的双曲多様体については、原始的な不定値二元二次形式の狭義類数と基本単数を用いた記述が得られている。本年度の研究では、これを全ての合同部分群において、セルバーグゼータ関数が、同様に二次形式の類数と基本単数で表されることを証明した。さらに、用いられた代数体を虚二次拡大することによって、この結果を3次元双曲空間に作用するモジュラー群の任意の合同部分群を基本群とする3次元双曲多様体に拡張することができた。この研究結果は、length spectrumのような幾何学的な対象の具体的な記述を与えるだけではなく、ガウスの時代から伝統的に研究されている、二次形式の類数分布に関する情報も与えている。実際に、これまでにも、モジュラー群に関する素元定理から、二次形式の類数和に関する漸近公式が得られている。この漸近公式は、本研究の研究成果を応用することで、精密化できる。実際に、合同部分群に関する素元定理を類数を使って記述し、いくつかの合同部分群に関する素元定理の交代和をとることで、類数の部分和に関する漸近的な分布を得ることができた。
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