研究概要 |
今年度は研究課題「表現のモジュライ空間とねじれアレキサンダー不変量に関する研究」のうち,表現のモジュライ空間上の関数としてのねじれアレキサンダー不変量の明示公式とその基本的性質について詳しく考察した.より具体的には,トーラス結び目と呼ばれる性質のよい結び目のクラスについて,それらのねじれアレキサンダー不変量を剛性の観点から研究した.以下,得られた結果について述べる. ねじれアレキサンダー不変量の各係数は,一般に結び目群のSL(2,C)表現空間上の有理関数として表される.また,ねじれアレキサンダー不変量の変数tを1とおいて特殊化すると,結び目外部空間のライデマイスタートーションが得られる.このとき,表現空間上の複素数値関数を一つ定めたことになる.結び目外部空間にザイフェルト多様体の構造が入る場合には,この複素数値関数が定数関数となることが知られている.本研究では,トーラス結び目の場合に,ねじれアレキサンダー不変量の変数を特殊化する前の段階での各係数自身が,表現空間上の定数関数になっていることを示した. 上記結果は,ねじれアレキサンダー不変量の明示式を具体的に記述することで得られている.その直接の系として,Silver-Williamsによって得られていた,トーラス結び目のねじれアレキサンダー不変量に関する定理の反例を構成することに成功した.
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