研究概要 |
曲面の写像類群の元,すなわち写像類は,擬アノソフ型,周期型,可約型の3つのタイプに分類される,この中で最も一般的であるのが擬アノソフである,擬アノソフ写像類の不変量としてエントロピーという量がある.曲面Sを固定するときS上の擬アノソフのエントロピー全体には最小値1(S)が存在することが知られている。種数gのn個の穴あき曲面S(g,n)に対する最小エントロピーを1(g,n)とおく,2010年,Tsaiは与えられたg>1に対して1(g,n)のオーダーはlog n/nであることを示した. これはg=0,1の場合と対照的な結果である,(g=0,1の場合は,1(g,n)のオーダーは1/nである.)証明の中で,Tsaiは各gに対してエントロピーのオーダーがlog n/nとなるうような,S(g,n)上の擬アノソフf(g,n)の列を構成している,これまでの研究では,Tsaiの例よりも小さいエントロピーを持つ擬アノソフの族は知られていなかったが,本研究(高沢光彦氏との共同研究)によって,無限個のgに対してTsaiの例f(g,n)よりもエントロピーが小さい擬アノソフの族が存在することがわかった.本研究の例から得られる写像トーラスは,マジック多様体とよばれる1つのファイバー多様体と同相か,又はマジック多様体を,あるファイバーの境界スロープにそってDehn fillingして得られる ファイバー多様体と同相であることも従う.すなわち我々の(無限個の)例は,マジック多様体から得られることがわかった.
|