研究課題
本研究の目的は、佐々木多様体の標準計量を2つの異なるケーラー幾何(横断的ケーラー構造及びケーラー錐構造)を通して研究し、さらに弦理論において現在活発に研究されている「AdS/CFT対応」の数学的な理解を得ることである。この目標のもと、平成20年度に、本研究において、「AdS/CFT対応」の研究の中で得られる発想の一つである「体積最小化」を拡張し、それを複素幾何の問題に適用することで、次のような興味深い結果を既に得ていた:『トーリックファノ多様体に対して、佐々木計量の変形空間上に定義された無限個の関数族の母関数(Hilbert級数)の第一変分は既に知られている偏極多様体の漸近的Chow半安定性の障害と本質的に一致する。』本年は、ファノとは限らない偏極トーリック多様体について、その(漸近的ではなく)Chow半安定性をより直接、幾何学的不変式論に基づいた方法により調べることで、対応するDelzant多面体の組み合わせ的な情報によりChow半安定性を判定する幾つかの方法を得た。(例えば、その一つとして、偏極トーリック多様体がChow半安定であるためには、対応するDelzant多面体の重心と整数点の平均が一致することが必要であることを示した。)これらの結果の応用として、次の2つも得た:1.ファノではない場合でもHilbert級数の第一変分が漸近的Chow半安定性の障害を与えることが示せる。2.トーリック退化に関するK-安定性や相対K-安定性と漸近的Chow半安定性との関係を「テスト配位」の概念を導入することなしに組み合わせ論および、局所線形な凸関数に関する情報のみで与えることが出来ることがわかった。
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Advances in Mathematics
巻: 226, No.1 ページ: 254-284