初年度においては、1モード相互作用フォック空間と付随する一般化されたシーガル・バーグマン変換を用いた量子確率的手法により、マイクスナー型確率変数がC上回転不変確率測度に関して2乗可積分な解析関数空間(ヒルベルト空間)上で働く生成・消滅作用素を用いて実現できることを明らかにした。回転不変確率測度の非自明な例としては、変形ベッセル関数を用いて表現される確率測度があることも分かった。これらの結果は、ハマメット(チュニジア、2008年10月)で開催された「第29回量子確率論とその関連領域」に関する国際会議や忠北大学(韓国、2009年1月)での「第3回無限次元解析と量子確率」に関する国際ワークショップ等において講演発表した。速報論文はQP-PQ第23号に掲載された。これらの研究結果から、想定外であったが、マイクスナー系列より一般的なウィルソン系列の直交多項式と付随するC上の確率測度が本研究課題の範疇に入るのではとの感触を得ることが出来た。まずは、ウィルソン系列でありマイクスナー系列より上位にある連続双対ハーン多項式と付随するヤコビ・セゲーパラメータをとりあげ、これらから構成されるC上の確率測度に焦点をあてた論文の執筆準備に取り掛かった。 久保泉氏(広島大名誉教授)や郭輝雄氏(ルイジアナ州立大学)とは、乗法的繰り込み法の観点より、非指数型母関数から導かれる確率測度と直交多項式についての研究打合せを行った。複数の関連研究者から、無限分解可能分布とリー代数との対応関係を調べるために、我々の方法が有効ではないかとの指摘がなされていることは注目に値する。
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