離散的対象のランダム生成アルゴリズムの設計に取り組んだ。 1. コーダルグラフサンドイッチは、すべての2頂点間の制約として、 使用しなければならない枝、使用して良い枝、使用してはならない枝、の3種類のいずれかが与えられ、制約を満たすコーダルグラフを対象とする。与えられる制約に制限がない場合、制約を満たすコーダルグラフの存在判定はNP完全であることが知られている。本研究では、 下限グラフ(使用しなければならない枝からなるグラフ)もしくは、 上限グラフ(使用しなければならない枝+使用して良い枝からなるグラフ)がコーダルの場合に対象集合が、枝の包含関係の意味で階層半順序構造を持つことに着目し、以下の事実を明らかにした。 (1) 効率的な列挙アルゴリズムを構築した。 (2) マルコフ連鎖を利用したランダム生成アルゴリズムを設計した. このマルコフ連鎖に対して、最悪の場合、収束時間が指数的になる問題例があることを突き止めた。 (3) コーダルグラフサンドイッチの近似一様ランダム生成が、下限グラフを連結コーダルグラフに制限した場合でさえ、グラフ中の森の乱択近似数え上げと同等以上に困難であることを明らかにした。 2. 閉ジャクソンネットワークの積形式解に対して、多項式時間で収束する単調マルコフ連鎖を設計することで、多項式時間の完壁ランダム生成法を実現した。 3. 一般化メデイアン安定結婚問題に対して、多項式時間の乱択近似計算が、有限分配束要素の近似一様ランダム生成と同等の困難性であることを明らかにした。有限分配束要素の近似一様ランダム生成の多項式性は重要な未解決問題である。
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