研究概要 |
1次元ブラウン運動の処罰問題を支配するシグマ有限測度(以下,処罰測度と呼ぶ)の諸性質について研究した.その結果,以下のことが明らかとなった. (1) 処罰測度の下でウィーナー積分(非ランダム過程の確率積分)が定義可能となるための被積分過程の条件を調べ,その条件が3次元ベッセル過程に対する条件について原点での可積分性を緩和したものであることを突き止めた.(学術雑誌に投稿中) (2) 非ランダムな平行移動に対する処罰測度の変換の絶対連続性について調べ,ウィーナー測度の場合のカメロン・マルティン公式と全く同様の形の結論を得た.しかしながら,そこに現れるラドン・ニコディム密度の可積分性については事情が全く異なり,処罰測度の下では如何なる幕に対しても可積分でないことを明らかにした.処罰測度はウィーナー測度と局所絶対連続であるため全く同様の形の絶対連続性を持つことは自然な結論のようにも思われるが,一方で,処罰測度は3次元ベッセル過程と近い振る舞いをするにも関わらず3次元ベッセル過程に対する絶対連続性(Zambottiの定理)とは全くかけ離れているという点で意外な結論でもあった.(Journal of Functional Analysis, to appear.)
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