離散可積分系の視点から定式化された帯行列の固有値計算アルゴリズムについて、論文にまとめて国際的な論文誌への投稿を行った。線形計算の視点からも、逆に離散可積分系の新たな知見が得られ、この成果は国際論文誌AIP Conf.Proc.およびPhys.Lett.Aに掲載された。一連の研究によって、「離散可積分系」と「線形計算」の異なる両分野をともに拡充することができた。 ニュートン法に基づく対角化アルゴリズムに関しては、これまでは無限桁演算を前提にアルゴリズムの基本的な性質を解析していたが、有限桁演算における数値誤差についても理論的な解析を進めた。特に、行列の特異値分解については、ニュートン法に基づく提案アルゴリズムの方が、国際標準とされる線形数値計算ライブラリLAPACKのアルゴリズムよりも、確実に高精度に計算できることが明らかとなった。理論的にだけでなく、検証実験を通じて数値的にも確認した。この成果は国際論文誌Computingに掲載された。提案アルゴリズムの高速化については課題が残るが、確実に高精度な特異値分解が得られる点は大きな進歩といえる。 その他にも、Max-Plus代数における固有値に関する新しい知見を導き、対角化アルゴリズムの数値安定性や収束性に関しても誤差解析理論や中心多様体理論を利用して解析を深めることができた。これらの成果については、国際論文誌に投稿する論文を執筆するためのまとめを行った。実際の論文執筆および論文投稿に関しては今後進める予定である。 さらに、当初の研究計画には含まれていないが、生物数理モデルであるロトカ・ボルテラ系がフィボナッチ数や黄金比と関連することも副次的に得られた。以上の研究成果の多くは、学会や研究会等で発表した。
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