研究概要 |
本年度は,本研究課題の最終年度であったが,研究成果に関してはおおよそ満足のいくものであった.当初の目的の通り,自身で予想した行列トレースの解決,さらにはその応用としてTsallis相対エントロピーの下界の導出に成功したからである. また,2010年に自身の結果として出版した論文の更なる発展として,Wigner-Yanase skew informationを用いたシュレーディンガー型の不確定性関係の一般化の問題について解決した,すなわち,Wigner-Yanase-Dyson skew information及びMetric adlusted skew informationを用いた不確定性関係を導いた.(2012年4月頃出版予定である.) さらに,数学的な成果としてYoungの不等式の改良や逆不等式などの成果があった.Belmega-Lasaulce-Debbahの行列トレース不等式を改良した結果もある.そのほか,行列解析の応用としてのランキングの問題や一般化されたダイバージェンスに関する成果もあった. 反省点としては得られた数学的成果について必ずしもすべてのものに物理的意味付けが行われているわけではないので,今後はそれらについての考察が必要となると思われる.今後の課題としたい.例えば,上述した不確定性関係はあくまでも数学的な改善に過ぎず,物理的にどのような利点があるのかがまだ不明確である.逆に評価される点としては,今年度得られた結果について、いくつかのものが海外の研究者に引用されさらなる研究論文を出版されている点があげられる.
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