全複素平面上で定義された定数でない有理型関数の高階微分は極より沢山の零点を持つというGoldberg予想を研究した。またそれと関連した、有理型関数の導関数に対するネバリンナの欠如指数関係式に対いする最良評価を与えるMues予想を研究した。この目的のために、ネバリンナの第二主要定理の逆向きの評価式、及び有理関数をターゲットとする一様な分岐項つきの第二主要定理を研究した。Mues予想などへの応用上重要なのは、一様な第二主要定理の誤差項をターゲットの数の多項式オーダーで評価することである。そのために、アールフォルスによる被覆面に対する第二主要定理を精密化して、ターゲットとなる点の個数の多項式オーダーでの評価を示した。さらに、タイヒミュラー空間論、モジュライのコンパクト化に現れる退化曲線の樹構造、双曲リーマン面に対する細・太分解などを援用して現在、論文を執筆中である。この仕事は21年度にも継続して行なうことになる。 また、別の研究として、像がザリスキー位相に関して稠密な整正則曲線を許容するような射影多様体を研究した。得られた成果は、そのような多様体の基本群はいかなる線形表現に関しても像が有限の違いを除けば可換になる、というものである。応用として、スタイン空間の線形群による商として作られる射影多様体がザリスキー位相に関して稠密な整正則曲線を許容すれば、そのような多様体は実質的にはアーベル多様体となることを示した。これは、すでに知られた幾つかの結果の拡張になっている。この結果は、フランスの雑誌Ann. Inst. Fourierに出版予定である。
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