研究概要 |
1. 研究成果の内容 : 本年度は研究目的のひとつである, 複素ポテンシャルをもつ2次元シュレーディンガー作用素の散乱の逆問題に関して成果を得た. 散乱の逆問題を境界値逆問題に帰着させることで, 適当な意味で小さい複素ポテンシャルが, エネルギーを1つ固定した場合の対応する散乱振幅から一意的に定まり, さらに具体的に求める再構成手続きを与えることに成功した. 2. 意義 : エネルギーを1つ固定した場合の散乱の逆問題は, 多次元(空間3次元以上)の場合は優決定(Overdetemined)の問題すなわち未知関数よりも既知関数の独立変数の方が多い問題である. 一方, 空間2次元の場合は未知関数と既知関数はともに2変数の関数となり, 多次元の場合と問題の構造が異なっている. そのために2次元の場合は多次元の場合とは違った様々な数学的困難さが生じる. これらを解決することは逆問題の数学解析にとって重要な課題となっている. さらに, 空間2次元における研究結果は数値実験への応用へと発展する可能性を秘めている. 3. 重要性 : 本年度の研究で, 2次元における逆問題で生じる数学的困難を解決する1つのアプローチを提示した. この方法は他の問題にも適用できる可能性があると思われる。さらに, 数値実験への応用も検討できるような具体的な再構成法を与えることができたという点でも, この研究成果は重要な位置を占める.
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