研究概要 |
平成23年度は,κ|u|^<p-1>u+iβ|u|^<q-1>uを非線形項にもつ複素ギンツブルク・ランダウ型方程式(以下(CGLT)と略記する)とその特別な場合である非線形シュレディンガー型方程式(以下(NLST)と略記する)に対して,粘性消滅極限問題を検討した.具体的には(CGLT)の大域的強解が(NLST)の大域的強解に収束することがわかってきた.また,前年度に見通しが立っていた複素ギンツブルク・ランダウ方程式のCauchy問題に対するコンパクト性の方法の改良版については,非常に簡潔な証明をつけることができ,論文をまとめて専門誌Journal of Differential Equationsに投稿した.その証明方法は非線形熱方程式などの基本的な方程式から(CGLT)まで応用可能であり、抽象的な枠組みで定式化されることが期待される.さらに,(CGLT)の爆発解の研究は困難を極めていたが,同じ放物型偏微分方程式である準線形退化型ケラー・シーゲル方程式(KS)に対して爆発を示唆する新しい結果を得ることに成功した.その結果は,(KS)の時間局所的強解の存在性を仮定することにより有界な大域的強解の非存在を主張するものである.証明はリヤプノフ関数と背理法を利用するため(CGLT)にはそのまま応用できるものではないが,大域的強解の一様評価が鍵となっており(CGLT)に対する研究の参考になると思われる.また(KS)に対して得られた成果は、退化型の場合では未解決問題として残されていたこともあり、意義及び重要性は極めて大きい.
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