水の波の運動を調べることは、流体力学における主要な問題である。通常、この運動は、渦がない非圧縮性理想流体に対する自由境界問題として定式化され、いくつかの場合について、時間局所解の存在が示されている。 一方、現実の海には渦がある。そこで、渦なしの仮定をせずに、水の波の問題を考察する。本研究では、流体領域が帯状で、初期データが大きな水の波の問題に対して、時間局所解の存在について考察している。特に、水面が覆い被さっている(グラフで記述できない)場合を扱う。 この問題は、渦なしの仮定の下でも、既に考察されている。しかし、現実の流れでに、波が覆い被さっている部分に渦が集中している。従って、渦ありの場合に修正することは、現象の観点から非常に重要である。 渦あり流れの場合に起きる問題点は、波が覆い被さる部分でテイラー不安定性に関つる符号条件が満たされない、ということである。このため、先行研究の線形理論が直接適用できない。 そこで、表面張力の影響を考慮に入れた方程式を考察した。本年度は、この問題に対する線形問題が解をもつことを示した。
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