研究概要 |
種数4の向き付けられないコンパクトな曲面(クライン面)のうち, 種数のみで定まる最大半径の円板(極値的円板)を埋め込むことのできるもの(極値的曲面)について, 次の結果を得ることが出来た。 1. 種数4の極値的クライン面は同型を除いて144種類存在する。 2. それぞれに対して極値的円板は高々2個埋め込み可能であり, ちょうど2個埋め込み可能な曲面は22種類存在する。これにより大部分の曲面に対して, 埋め込み可能な極値的円板の個数は1個であることが判明した。 3. すべての極値的円板の埋め込み位置を確定することが出来た。そして2個埋め込めるものに対しては, 内在する数値として極値的円板の中心点間の距離を計算することが出来た。 4. この144種類の曲面に対して自己同型群を求めることが出来た。それらは位数2の巡回群の高々3個の直積, 位数6または12の二面体群, そして単位群のいずれかであり, 比較的位数の小さい群であることが判明した。 5. クライン面の基本領域である双曲正18角形に対して, 辺の貼り合わせの仕方をすべて得ることが出来た。 種数2の極値的リーマン面に対しては, ワイエルシュトラス点を通る測地線を用いて, 向かい合う辺が同一視される特殊な基本領域を構成した。この基本領域は対称性がなくなるが, 座標付けにつながる内容である。 これらの結果は, 極値的曲面がモジュライ空間の中でどのような特異点になっているかを解明するための基礎的な情報と成り得る。また, 自己同型群を決定することは, それ自身重要な問題である。この研究ではクライン曲面を基本領域の辺の貼り合わせで表現しており, 視覚的に扱いやすいものとなっているので応用範囲が広いと思われる。
|