研究概要 |
1. 種数5の極値的クライン面(向き付け不可能な閉曲面であり、種数によって定まる最大半径の円板を許容するもの)の基本領域をすべて得ることが出来た。それらは双曲正24角形で表され、辺の貼り合わせ方は全部で3627通りであることが判明した。この結果を得るために、8個の頂点、12個の辺をもつ71種類の三枝グラフをすべて求めた。これらの解析は数式処理ソフトでプログラムを作成し、コンピュータによる処理で行った。極値的クライン面はモジュライ空間の中である種の特異点をなすと思われるので、これらすべてを求めることはモジュライ空間の解析に対して大いに意義がある。 2. k個の境界をもつ単葉型クライン面で位数mの自己同型写像をもち、それによる商空間の代数的種数がpとなるものに対して自己同型群を考察した。位数mが3のときの結果は既に知られているため、3より大きい素数に対してk,m,pの関係から自己同型群を確定させた。この結果は単葉型ではあるが、クライン面の同型による分類及び自己同型群の研究に貢献できたといえる。 3. 双曲正8角形を基本領域にもつ種数2のリーマン面は全部で4通りの辺の貼り合わせ方がある。 これらすべてに対して、ワイエルシュトラス点を通る単純閉測地線による分割を行い、対応する辺の貼り合わせを行うことにより、対辺が同じ長さであり対角が同じ大きさになる基本領域を具体的に構成した。そしてこれら4種類のリーマン面に対して、構成した基本領域から得られる7つの単純閉測地線の長さを用いて、タイヒミュラー空間上における7次元の同次座標を与えることが出来た。この結果は具体例ではあるが、タイヒミュラー空間の方程式を記述するための基礎になるといえる。
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