平成22年度は、Emden-Fowler型常微分方程式の2点境界値問題の正値解が一意であるための十分条件をいくつか新しく得ることができた。そのうちの一つはこれまでの結果とはまったく違ったタイプの条件である。過去の結果はEmden-Fowler型方程式のもつある指数に無関係な条件であったが、今回得た新しい結果により、その指数が小さい方が正値解が一意になりやすいことがわかる。また、対称性をもつEmden-Fowler型常微分方程式の2点境界値問題について、一つの正値偶関数解と二つの正値非偶関数解が存在するための十分条件も得ることができた。これまでにEmden-Fowler型の問題で正値解が非一意である例はいくつか知られていたが、今回の様な一般的な結果はこれまで得られていなかった。今回得られた結果は一次元のHenon型の方程式に関する境界値問題にも適用できるものであり、ある二つの指数がともに小さいと正値解は一意であり、二つの指数が大きいと3個以上の正値解が存在することがわかる。符号変化する解を扱うのは難しいことが多く、正値解の結果を得ることが符号変化する解について研究する上での第一段階となる。従って、今回の解析を足がかりにして符号変化する解に対する解の個数に関する結果を得ることができる。Emden-Fowler型微分方程式はさまざまな微分方程式の原点でもある方程式であり、また、楕円型の偏微分方程式の球対称解の解析においても非常に重要な方程式でありEmden-Fowler型方程式で新たな結果を得ることにより、様々な応用が期待できる。
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