非圧縮性粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式の研究を、流体の占める領域が二枚の平行な板の間である場合に行った。平行平板間における流れの解析は物理的な問題として重要であり、また数学的立場からいえば境界が有界でない典型的な例である。まさに実解析的方法の発展により数学的な解析が可能となった分野である。平成21年度は、平行平板間におけるStokes方程式のレゾルベント問題の解を、Holder空間において評価し、最良の評価が得られた。この結果から、Stokes作用素が解析的半群を生成することがわかり、空間遠方で減衰しないある種の初期値に対して、Navier-Stokes方程式の初期値問題の時間局所解が、逐次近似法によって構成できると予想される。また、種々の特殊解の安定性・不安定性についても議論することが可能になる。一方で、L^∞空間や斉次Besovにおけるレゾルベント評価は依然として未解決のままであり、今後の継続課題としたい。また、以前の研究で得られた負の微分可能性をもつSobolev空間やBesov空間におけるStokes作用素のレゾルベント評価を用いて、これらの関数空間を初期値のクラスとし、Navier-Stokes方程式の初期値問題の時間局所解を構成した。特殊解の安定性に関しては部分的には解決した点もあるが、不十分さが残る結果であり、今後検討の余地があると考えている。
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