研究概要 |
余零問題について、3次元以上の領域において余零問題の解が存在しない具体例を、K.Steinの複素2次元の領域におけるクザン第2問題が解けない解析的集合を利用して、新たに構成することに成功した。 領域の変分問題に関し、昨年度得られたL_1-主関数の変分公式を手がかりにして、本年度はL_0-主関数に関する次の研究結果を得た。複素パラメーターtと共に滑らかに動くプラナーリーマン面R(t)上の、対数極を2つもつL_0-主関数について2階変分公式を求めた。そして、その領域の変動が擬凸状領域ならば、等角写像で重要な働きをするL_0-主関数から誘導されるL_0-定数はtについて優調和であることを示した。一方、対数極を1つもつL_0-主関数については同様のタイプの変分公式は成立しないことを明らかにした。さらに、対数極を2つもつL_1-主関数およびL_0-主関数の変分公式を結合して得られる調和スパンの2階変分公式を明記し、領域の変動が擬凸状の場合には調和スパンが劣調和に動くことを明らかにした。その具体例として、ハルトックス領域での調和スパンの具体表示を求めた結果、ポアンカレ距離に関する応用を得ることに成功した。得られた結果をまとめた論文Variation formulas for principal functions (II) Application to variation for harmonic spans (S.Hamano, F.Maitani and H.Yamaguchi)はNagoya Mathematical Journalに受理された。また、領域の変分問題に関する研究結果を日本数学会函数論分科会の特別講演で報告した。
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