研究概要 |
おもに1次元複素力学系における剛性問題について研究した.「複素力学系」とは複素多様体上の,自己正則(複素構造を保存する)写像による力学系である.また「剛性」とは,力学系の作用をリスペクトする複素構造の変形が強く制限される性質をいう.とくに有理写像による複素力学系研究においては,力学系をそのカオス部分に制限して得られる力学系の剛性はもっとも重要なテーマであり,いくつかのアプローチが知られている.今年度も昨年度から引き続き,ザルクマンの補題とよばれる関数族の非正規性の判定条件に着目し,この補題によって生成されるリーマン面ラミネーションの幾何学的構造を調べることで,力学系の剛性理論への応用を目指した. ラミネーシゴンの幾何学的構造に関して,メキシコ国立大学・数学研究所のC.カブレラと共同で中立的周期点をもつ複素力学系についてそのラミネーション構造の研究を行った.とくにラミネーションに現れるリーマン面の型(放物型,双曲型,etc)を決定する問題について研究した.この結果をまとめた論文については,出版が決定した,また,昨年度にひきつづき,台湾中央研究院のY-C-チェンとは,2次多項式族における双曲的ジュリア集合の退化を微分方程式系で記述する問題について共同研究した.正則運動が境界で退化する様子を記述するために,正則運動の速度の境界挙動を具体例について評価した.その他,ザルクマンの補題のパラメーター空間への応用,リーマン面ラミネーションの変形理論(タイヒミュラー理論)を剛性問題に適用する方法などを研究した.
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