研究概要 |
(1)一般のRiemann多様体上でのAharonov-Bohm型磁場を持つSchrodinger作用素の自己共役拡張に関する研究を行った。(2)愛媛大学の野村祐司氏との共同研究で,双曲上半平面における定数磁場と周期的Aharonov-Bohm型磁場を併せ持つSchrodinger作用素のLandau準位の重複度について,前年度までに得られていた結果の精密化を行った。(3)2次元Euclid平面上の無限個の点相互作用を持つSchrodinger作用素の自己共役拡張に関する研究を行った。(4)東北学院大学の神永正博氏との共同研究で,1次元Euclid直線上の周期的な点相互作用に対するSchrodinger方程式の解作用素に関するStrichartz型時間減衰評価に関する研究を行った。 (1),(3)は多様体上での量子力学を扱う上での基礎となる研究である。(1)が一般のRiemann多様体上の結果であるのに対し,(3)はEuclid平面に限定してより精密な結果を与えることを目的とする。(1)については「Acta Mathematica」誌に結果が掲載された。(3)については現在引き続きPavel Exner氏との共同研究を行っている。 (2)は研究代表者がこれまでにEuclid平面上のSchrodinger作用素について得た同様の結果に対し,双曲多様体の負曲率が及ぼす影響を調べるのが目的である。特に周期格子の対称群が尖点を持つ時,前年度までの結果を大幅に一般化し,より広範な格子を取り扱うことに成功した。結果は2011年2月の研究集会「Spectral and Scattering Theory and Related Topics」で発表した。 (4)は線形方程式の性質としても興味深いが,非線形Schrodinger方程式への応用の観点からも意義深い。現在までに神永氏と共にBloch理論を用いた解析的な計算,および数値実験を行った。
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