研究概要 |
本研究ではAllen-Cahn方程式を含む単独の双安定反応拡散方程式を1次元数直線上で考える。昨年度の研究では方程式に空間非斉次性を含み,その空間非斉次性が数直線上のある区間上で退化している設定において,拡散係数が十分小さいとき,その区間上での遷移層のダイナミクスを考察した.この場合,遷移層のダイナミクスは遷移層の位置に関する1次元のダイナミクスへ縮約され,その位置の動きが常微分方程式として記述されることを示した.本研究成果は学術論文「The motion of a transidon layer for a bistable reaction diffusion equadon with heterogeneous environment」として学術雑誌Discrete and Condnuous Dynamical Systems Sehes Aに掲載されている.昨年度の研究では空間非斉次が一定の区間で退化している設定では,それを空間非斉次性のない方程式からの摂動と捕らえることによって,空間非斉次性がない場合の定常フロント解を近似解として,不変多様体の手法を用いることが可能となったことが鍵となったが,そのことを踏まえ今年度はより一般的な双安定反応拡散方程式系で同様の問題を考えた.空間非斉次性がない方程式での定常フロント解の存在およびその無限遠での漸近挙動,定常フロント解のまわりの線形化作用素のスペクトルの分布および0固有関数の無限遠での漸近挙動,その共役作用素の0固有関数の漸近挙動に適当な条件を課すことにより,単独の方程式の場合とほぼ同様の議論が可能であることがわかった.この仮定を満足する双安定系として,2種の競争する生物の個体数密度分布の変化を記述する2種競争系が考えられるが,定常フロント解および線形化作用素の0固有関数の無限遠での漸近挙動に関してより詳しい情報が必要であることがわかり,現在研究を進めている.
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