研究概要 |
申請者は,弱い重力レンズ解析・光学解析・X線解析を用いて、世界で初めて、銀河団の暗黒物質分布、バリオン(銀河、銀河団ガス)分布を系統的に明らかにした。力学的に若い銀河団の暗黒物質倉布は銀河団ガス分布と異なり、力学的に緩和した銀河団では暗黒物質分布と銀河団ガス分布と良く一致していることを明らかにした。また銀河分布と暗黒物質分布は力学状態に依存せず一致していることを明らかにした。このことは、暗黒物質の素粒子性質が銀河団ガスのように動圧など受けやすい粒子ではなく、銀河のように質点近似可能な子であることを示唆している。さらに、力学的に若い銀河団の温度は銀河団の質量から期待される温度よりも2-3倍上昇していることを明らかにした。温度上昇値は銀河団の理論から期待されている衝撃波加熱と一致している。この重要な研究成果は、申請者が行っている異なる観測手法のジョイント解析によってのみ可能である。申請者らは、異なる観測手法による観測量の相関を調べることにより、それぞれのシステマティックスについて議論を行った。これらの議論は将来の多波長大規模データに基づく銀河団を用いた精密宇宙論の研究において重要となる。すざく衛星を用いてOphiuchus銀河団の観測を行い、中心部で冷たいコアを持つが、最も温度の高い銀河団の一つであることを明らかにした。他、すばる望遠主焦点カメラを用いて30個の銀河団弱い重力レンズ解析を行い、論文を投稿した。また、スピッツアー衛星とすばる望遠鏡のデータを用いて、銀河団銀河のダストに隠れた星形成率が銀河団衝突によって引き起こされている可能性があることを示唆する論文を投稿した
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