これまでにM42をはじめとする星形成領域、銀河中心、系外銀河などを観測した。その結果、系内の星形成領域と銀河中心にてPAH輝線を検出することに成功した。特にM42で検出されたPAHの空間分はSPITZER望遠鏡による中間赤外線の強度と良い相関があり、PAHと星間ダストおよび紫外線放射場の関連が議論できると期待する。 観測装置立ち上げ当初ということもあり、データの解析手法や校正方法の確立を行った。PAHバンドで銀河中心を撮像する場合、1視野あたりおよそ2時間を要することがわかり、今後乗銀河面掃天計画の観測計画の目途が立った。 装置において、波長3ミクロンでも地上から十分な感度で観測が可能であることがわかり、観測装置を冷却した効果が実証された。しかし大きく4つの問題が発生した。それらは、冷凍機による望遠鏡の振動、架台モータのサーボによる検出器ノイズの発生、読み出しクロックパターンの間違い、冷却時による10秒角程度の光学収差である。これら問題のうち光学収差以外は改善を行い解決した。 装置の立ち上げは万全ではないものの、他の研究者との共同研究も開始した。具体的には冷却望遠鏡によって、ηカリーナの5年周期の質量放出イベントをモニタリング観測するものである。加えてこの研究を通して3名(大学院後期1名と前期2名(ともに留学生))の教育を行った。うち1名は修士論文として装置開発から観測までの研究をまとめた。
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