2009年7月におよそ1カ月間南アにて銀河中心方向の5平方度にわたるUIR輝線サーベイ観測を行った。われわれの観測結果では、顕著なUIR輝線を放射する天体や広がった構造はこれまでの近赤外線の撮像観測等によって知られている星形成領域と星団の周辺のみの3天体でしか検出されなかった。UIRを放射するPAHは銀河に普遍的に存在すると考えられているが、M42のような大質量星形成領域に相当するようなUIR放射天体は銀河中心方向の5平方度からは確認できなかった。またいずれの天体も中心の1平方度に存在し、周辺の4平方度からは検出されなかった。 本年度で2年間の研究期間を終了するが目標サーベイ領域の2割に満たない領域しか達成できなかった。これは観測感度が低いために1平方度分のデータを取得するのに1晩以上要することが主な原因である。加えて冷却望遠鏡は装置全体を真空引きするため、望遠鏡先端に大きな窓を有する。この窓が低温高湿度の気象条件時には曇ってしまい、晴天でありながら観測できない状態が頻発した。今年度で課題期間は終了するが、装置の改良(光学系の修正、フィルター交換機構の交換、窓の曇り対策)を行ってより高い観測効率を実現し、のこりのサーベイ領域を観測したい。これに加え、装置の特殊さ(低熱雑音と広視野)から銀河中心方向の変光星モニタリング観測の共同研究依頼がある。そのために装置とドームのリモート観測化を実現する。これによってよりサーベイ観測の大幅な効率化が図られると期待する。
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