本年度は、昨年度導入した新ウォラストン・プリズムの性能出しを行いながら、ガンマ線バースト(GRB)の観測を継続するとともに、昨年度得られたGRB 091208Bの偏光測光データの解析を進めた。 新プリズムについては、無偏光標準星の観測を多数回実施し、器械偏光を精査した。観測値に対してモデル曲線をフィットすることにより、任意の赤緯・時角における器械偏光を求めることが出来るようになり、キャリブレーション方法を確立することができた。最終的な偏光測定精度は△p=0.3%である。併せて、強偏光標準星の観測から偏光方位角の回転方向および原点についても決めた。 GRBに対する観測は2010年度中に16回行った。そのうち11回は自動で観測を開始することができた。ただ、11回とも残光成分が暗く、偏光を測定するには至らなかった。なお、11回中5回は100秒以内で露出を開始でき、最速ではGCN受信から42秒後に観測を開始できた。これは1.5m望遠鏡では世界的にも最速クラスである。 GRB 091208Bの解析では、爆発150秒以降の可視光とX線の光度曲線の振る舞いを標準モデルと比較することで、数千秒までの可視・X線輻射は外部衝撃波による残光でうまく説明されること、その場合観測されたp=10±4%の直線偏光はシンクロトロンモデルを支持する結果を得た(投稿準備中)。 なお、当初本課題は平成23年度までを研究期間としていたが、平成23年度から基盤(B)の別課題が採択されたことから、本課題は平成22年度にて終了となる。ただ、東広島天文台の1.5m望遠鏡とHOWPolによるGRB観測のスタンバイ・自動観測は、今後も継続する予定である。
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