電波干渉計による近傍銀河中心部の動力学の研究

2009 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20740108
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 澤田 聡子 山口大学, 大学院・理工学研究科, 非常勤研究員 (00452631)
• キーワード: 電波天文学 / 銀河 / 活動銀河核 / 質量降着 / 分子ガス / メーザー

研究概要

本研究課題は、系外銀河の半径1kpcスケールの銀河回転系と活動銀河核(AGN)領域1pcスケールでの回転系とで回転軸や角運動量がしばしば異なることに着目し、銀河の星間ガスが中心のAGNトーラスへどのように質量降着していくのかその過程を明らかにすることを目指している。
本年度の活動として、まず山口32m望遠鏡を用いて局部銀河群内の銀河M33のメタノールメーザー源探査を実施した。M33は銀河系から250万光年の距離にある極めて近い系外銀河であり、銀河の回転運動を外部から間近の距離にて調べるのに都合の良い観測対象天体である。また、HII領域に付随するメタノールメーザー放射は、10年以上に渡り長く安定して放射を継続することが知られており、M33の銀河回転の運動の指標として役立つと期待出来る。しかし、メタノールメーザー源の発見は1990年代と新しく、これまで十分に探査が行なわれて来なかった。我々はM33のメタノールメーザー源の初検出を目指し、M33内の計18個のHII領域について、銀河系内の典型的なメタノールメーザー源の光度と同等の検出限界(10e-6太陽光度)で行なった結果、有意な検出は得られなかった。M33は銀河系より星形成率の値が低いことから、保有するメタノールメーザー源の個数が銀河系内より少ない可能性が考えられる。今後さらに検出限界を下げて詳細な探査を行なっていく予定である。
その他の活動として、サブミリ波干渉計SMAを用いたクエーサー3C273の観測を実施した。これまで知られていなかったサブミリ波帯での3C273のAGN領域のガスやジェットの描像を明らかにすべく、現在解析中である。さらに、大学連携VLBI観測網JVNを用いて、HII領域S269に付随するメタノールメーザー放射の高角分解能マッピング観測を行なった。

研究成果

• [雑誌論文] Plasma and Molecular Tori in the Active Galaxy NGC 1052 (2009)
  • 著者名/発表者名: Nakamura, K., et al.
  • 雑誌名: Approaching Micro-Arcsecond Resolution with VSOP-2 : Astrophysics and Technologies ASP Conference Series, proceedings of the conference held 3-7 December, 2007, at ISAS/JAXA, Sagamihara, Kanagawa, Japan. Edited by Yoshiaki Hagiwara, Ed Fomalont, Masato Tsuboi, and Yasuhiro Murata. 402 ページ: 116-119
• [雑誌論文] Spatial Distribution of an AGN Plasma Torus with 0.04-parsec Resolution (2009)
  • 著者名/発表者名: Namikawa, D., et al.
  • 雑誌名: Approaching Micro-Aresecond Resolution with VSOP-2 : Astrophysics and Technologies ASP Conference Series, proceedings of the conference held 3-7 December, 2007, at ISAS/JAXA, Sagamihara, Kanagawa, Japan. Edited by Yoshiaki Hagiwara, Ed Fomalont, Masato Tsuboi, and Yasuhiro Murata. 402 ページ: 120-122
• [雑誌論文] Structure and Kinematics of CO (2-1) Emission in the Central Region of NGC 4258 (2009)
  • 著者名/発表者名: Sawada-Satoh, S., et al.
  • 雑誌名: Approaching Micro-Arcsecond Resolution with VSOP-2 : Astrophysics and Technologies ASP Conference Series, proceedings of the conference held 3-7 December, 2007, at ISAS/JAXA, Sagamihara, Kanagawa, Japan. Edited by Yoshiaki Hagiwara, Ed Fomalont, Masato Tsuboi, and Yasuhiro Murata. 402 ページ: 123-126
• [雑誌論文] Positional Coincidence of H_2O Maser and a Plasma Obscuring Torus in the Radio Galaxy NGC 1052 (2009)
  • 著者名/発表者名: Sawada-Satoh, S., et al.
  • 雑誌名: Approaching Micro-Aresecond Resolution with VSOP-2 : Astrophysics and Technologies ASP Conference Series, proceedings of the conference held 3-7 December, 2007, at ISAS/JAXA, Sagamihara, Kanagawa, Japan. Edited by Yoshiaki Hagiwara, Ed Fomalont, Masato Tsuboi, and Yasuhiro Murata. 402 ページ: 127-130
• [雑誌論文] The Kinematics of the Methanol Maser at 6.7 GHz in Cepheus A (2009)
  • 著者名/発表者名: Sugiyama, K., et al.
  • 雑誌名: Approaching Micro-Aresecond Resolution with VSOP-2: Astrophysics and Technologies ASP Conference Series, proceedings of the conference held 3-7 December, 2007, at ISAS/JAXA, Sagamihara, Kanagawa, Japan. Edited by Yoshiaki Hagiwara, Ed Fomalont, Masato Tsuboi, and Yasuhiro Murata. 402 ページ: 392-395
• [学会発表] JVN用天体構造遅延時間効果計算ソフトウェアJADESS (2010)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: 日本天文学会
  • 発表場所: 広島大学、広島
  • 年月日: 2010-03-24
• [学会発表] KVNによるAGN周囲の分子トーラス (2010)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: ミニワークショップ:KVN-山ロアレイで狙うサイエンス
  • 発表場所: 山口大学、山口
  • 年月日: 2010-03-16
• [学会発表] UCHII領域S269の6.7GHzメタノールメーザーアウトフロー (2009)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: VLBI懇談会シンポジウム
  • 発表場所: 奥州宇宙遊学館、岩手
  • 年月日: 2009-12-03
• [学会発表] JVN用天体構造遅延時間効果計算ソフトウェア (2009)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: VLBI懇談会シンポジウム
  • 発表場所: 奥州宇宙遊学館、岩手
  • 年月日: 2009-12-03
• [学会発表] 高分解能サブミリ波マッピングによる近傍銀河の100pcスケール動力学:銀河円盤と中心核円盤のミッシングリンク (2009)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: NROワークショップ:高精度ミリ波・サブミリ波観測と最新理論モデルによる近傍銀河の構造の解明
  • 発表場所: 鹿児島大学、鹿児島
  • 年月日: 2009-11-17
• [学会発表] UCHII領域S269の6.7GHzメタノールメーザーアウトフロー (2009)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: 日本天文学会
  • 発表場所: 山口大学、山口
  • 年月日: 2009-09-14
• [学会発表] UCHII領域S269の6.7GHzメタノールメーザーアウトフロー (2009)
  • 著者名/発表者名: 澤田一佐藤聡子
  • 学会等名: 第7回VERAユーザーズミーティング
  • 発表場所: 国立天文台三鷹、東京
  • 年月日: 2009-09-02