本研究では、宇宙に存在する巨大質量ブラックホールが形成後どのように大質量に成長してきたかを、2つのアプローチにより探ることを目的としている。まず、成長中のブラックホールを見つけ出すため、質量が小さいブラックホールが示す特徴である激しいX線強度の変動を用いて候補天体の選出を行った。平行して、成長中のブラックホールが示す性質とその背景にある物理過程を、比較的近傍の天体の観測から明らかにすることを試みている。まず、激しい質量降着を起こしている天体の例として、セイファート銀河NGC 4051のX線観測データの詳細な解析を行い、X線スペクトル変動の要因を観測的に明らかにし、強度変動と質量降着過程についての基礎的な理解を進めた。またセイファート銀河PKS 0558-504のX線スペクトル解析から、質量降着率が大きい場合に期待される降着円盤と解釈できる軟X線放射の時間変動を見つけた。さらに、硬X線で明るい巨大質量ブラックホールの系統的観測を薦め、X線スペクトルの解析により大量の物質に覆われているものを多数見つけ出した。近傍にある活動銀河のうち大量の物質で隠されているものについて、ブラックホール周辺の物質の構造を推定した。これらは物質が大量に降り積もり成長しているブラックホールと密接に関連する状況であると考えられる。また、解析に必須な検出器バックグラウンドの性質の調査も行った。これらの成果の一部を査読付き論文と学会で発表した。
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