本研究では、宇宙に存在する巨大質量ブラックホールが形成後どのように大質量に成長してきたかを、探ることを目的としている。まず、成長中のブラックホールを見つけ出すため、昨年度に引き続きXMM-Newton衛星の大規模なX線天体カタログを基に、質量が小さいブラックホールが示す特徴である激しいX線強度の変動を用いて候補天体の選出を行った。選出した天体について、スペクトル解析を行い光度を求め変動との相関などの研究を進めてきた。同じカタログから濃い物質により隠されている巨大質量ブラックホールについて、質量成長の過程の指標である「エディントン比」と遮蔽物質の幾何学的厚みに正の相関があることを見いだした。これは、質量成長がブラックホール周辺の大量の物質に隠された状態で起こっていることを示唆するものである。さらに、詳細なX線スペクトル解析を行うとともに、可視光などの性質との比較も行い、これらの種族は可視光ではこれまでに見過ごされており、X線による探索が必須であることも明らかにした。これらの成果の一部を査読付き論文、国際研究会での招待講演などで発表した。また、吸収をあまり受けていない天体について、軟X線から硬X線に至る広いエネルギー範囲のスペクトルの詳細解析により、質量降着過程を探る研究を並行して進めており、特に質のよいスペクトルが得られているセイファート銀河Ark 120について詳細な解析と論文執筆が進行中である。
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