研究課題
本研究では、宇宙に存在する巨大質量ブラックホールが形成後どのように大質量に成長してきたかを探ることを目的としでいる。前年度までに、成長中のブラックホールを見つけ出すだめに、XMM-Newton衛星による大規模なX線天体カタログを用いた候補天体の探索を行ってきた。今年度は、候補天体の詳細な時間変動およびスペクトルの解析を完了し、統計的性質をまとめ、国内学会および国際研究会において成果を発表するとともに、論文として投稿・発表した。質量が特に小さいブラックホールを7天体、質量が激しく降り積もり急成長中にあると考えられるブラックホール6天体を発見した。これらは、過去の観測でブラックホールと認識されていなかったものである。個別のスペクトルの性質と、サンプル全体の統計的性質から、特に質量成長を起こしているものは、これまでの認識と異なり、スペクトルの形状が平らである(高いエネルギーのX線をより多く放射している)こともわかった.これにより、質量隆着量が特に増加すると、隆着円磐でのエネルギー開放が放射冷却に勝る状況になっていること、噴出による物質による吸収がより重要になる、といった過程が起こっていることが示唆された。また、探索の過程で発見した軟X線が異常に強い特異な性質を示す天体の詳細な解析を進め、この天体が急激な質量成長を起こしている可能性を示した論文を投稿し受理された。この論文では、巨大質量ブラックホールでこれまでに観測されたことのない、非常に明るい降着円盤の状態にあり、銀河系内のマイクロクェーサーのアナロジーとして理解できることを示した。これにより、質量降着率の大きい場合の降着円盤を、質量の小さい(太陽質量の数10倍以下)ブラックホールと統一して理解できる可能性を示すことができた。
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Astrophysical Journal
巻: (印刷中)
巻: 738 ページ: 9