本研究の目的は早稲田大学那須パルサー観測所において高銀緯で続々と観測されている突発的に発生する電波新星(電波トランジェント)をさらに高い精度の観測で検出し、その起源の特定を目指すことである。そのために、2009年度は他観測所(国外あるいは国内の大学連携VLBI網など)との連携観測を試行し、那須観測所で電波トランジェントを検出した際のフォローアップ体制の構築を目指した。 複数の観測装置(他周波数)での追観測に成功すれば、他波長に渡るスペクトル情報(SED)の取得が可能になる。また、VLBIでの検出により数ミリ秒角の精度で位置が決まると共に、コンパクトな天体であるかどうかの判別や輝度温度へ制限を付けることも可能になる。 電波トランジェントのVLBI観測における問題は、VLBIの分解能に対し那須観測所で検出される電波トランジェントの位置誤差が大きすぎる(~0.16deg2)という点である。この問題をVLBIでモザイク観測を行うことにより解決しようと考え、2009年12月に実際の追観測を想定し、論文化されている4つの電波トランジェントの位置誤差に対しVLBIでのモザイク観測を周波数8GHzにおいて行った。この観測では、4つの電波トランジェントに対応すると思われる電波源の同定には至らなかったが、これらの領域に定常的に150mJy(雑音レベルの8倍)を超えるような天体は存在しないという上限値を設定することができ、またVLBIで十分な感度をもって電波トランジェントを追観測できることを証明した。この成果を国際会議において発表した。
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