研究課題
太陽の質量程度の星(中小質量星)の進化に関して、今年度は次のような研究を行なった。(1)星形成に至らない分子雲コアともっとも若い原始星であるclass 0天体の中間の進化段階にある、L1521Fにおいてサブミリ波帯のCOJ=7-6輝線(周波数807GHz)等を初めて検出し、この高励起輝線が降着によるショック起源であると論じた。さらに、昨年度詳細に質量降着過程を調べたGF9-2と比較し、このような進化段階の物理的特徴を明らかにした。(2)GF9-2を産む母体の高密度分子ガス雲を取り囲む希薄ガスの速度場を調べ、GF9-2を産む母体のガス塊の重力収縮は、周囲の希薄ガスの乱流運動の減衰が契機となつたことを明らかにした。一方、太陽質量の8倍を超える大質量星の進化に関しては、次のように研究を行なった。(3)オリオン大星雲におけるCOJ=7-6輝線の広域マッピングに基づき、高速分子ガス流の力学的特徴を明らかにした。この結果から、駆動源である大質量原始星候補天体の特徴を導き、理論モデルとの比較を行なつた。なお、このCOJ=7-6データはOn-the-Fly法で取得されたものとしては、現時点で最高周波数のものである。(4)サブミリ波干渉計を用いて、大質量原始星候補天体の集団へ降着するガス流を捉えることにも成功した。観測されたガス流の最大の特徴は、形成のもっとも初期段階にある原始星団へ流れ込んでいる点であり、単独の中心星へ降着している中小質量原始星で見られる降着流とは大きく異なる。さらに、質量降着率も千倍以上大きいことがわかった。また、(5)米国及び欧州大陸超長基線干渉計等を用いて、このような原始星団から噴出する、1000天文単位スケールのガス流の観測や「すばる」望遠鏡を用いての原始星団の直接撮像も行なった。今年度の成果は、学術論文7編(印刷中の3編、審査中の1編を含む;うち筆頭著者のもの2編)としてまとめた。なお、今年度は育児休業のため、4ヶ月と2週間研究を中断した。
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Astronomy & Astrophysics 510
ページ: A86-A102
Astrophysical Journal Letters 703
ページ: 1198-1202
Astrophysical Journal Letters 706
ページ: L226-L229