宇宙では星が形成されて集まり銀河となり、銀河が集まり銀河団となり、銀河がフィラメント状の形に群がり質量が高密度な領域と銀河が殆ど無い低密度な空洞から成る泡状の大規模構造を形成している。銀河団は、この大規模構造のフィラメント同士が交差する超高密度領域に形成される。宇宙誕生初期には質量の密度ゆらぎが存在し、高密度な領域では質量集積と星形成が速く進み、銀河の群れが合体・成長を繰り返して現在の宇宙に見られる大規模構造に進化したと観測から分ってきている。本研究では逆に、宇宙の時間を遡り(=より遠くを観測し)ながら、銀河の空間分布、質量集積、星形成活動がどう変化してきたかを調べていき、宇宙の大規模構造と付随する銀河団、その構成銀河がどの様に形成されてきたか、その過程の解明を目指す。 平成21年度は、我々が発見した赤方偏移がz=6(宇宙年齢約9億年)の原始銀河団候補(=銀河数が高密度な天域)の構成銀河の物理的性質(サイズと星形成率)を求め、一般的な天域(銀河数密度が特別高くも低くもない天域)の銀河の性質と比較することで、z=6時代の宇宙でも銀河の性質に環境依存性があるかどうかを調べた。その結果、原始銀河団候補領域と一般的な天域でサイズと星形成率に有意な差は見られなかった。また、原始銀河が活発に星形成活動を行っている時にはライマンα輝線が出る場合がある。z=6原始銀河団候補の構成銀河の何割がこの輝線を出しているかも調べ、約20%が出していることが分かった。この割合はz=6時代の宇宙の一般的な天域の銀河の場合と殆ど同じであった。銀河団候補サンプル数は少ないものの、これは星形成活動の活発さは、z=6の時代で、銀河の個数密度が高い天域と一般的な天域で大きくは変わらず、環境依存性が弱い可能性を示唆する。
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