研究概要 |
フェルミ研究所にある陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンにおけるCDF実験によって得られた積分ビーム輝度で2.8fb-1相当のデータ中で見つかった195個のトップクォーク対生成事象候補を用いたトップクォーク・反トップクォーク対の間のスピン偏極度相関を測定し,結果をCDF実験のwebページや物理学会等で発表した.これは,2000年から始まったテバトロンの実験であるCDFおよびD0実験双方を通じてランIIにおけるスピン偏極度相関測定の初の結果であり,トップのスピンを用いたトップクォーク対生成の機構の解明において重要なマイルストーンとなった.今のところの測定感度は,トップクォーク・反トップクォーク対の間のスピン偏極度相関がある場合とない場合でおよそ1σ程度の有意度で分離が可能であるという程度であるが,今後の解析でデータ量を増やし,更に今回解析したトップクォーク対の崩壊モードとは別の崩壊モードの事象のデータを追加することにより,測定感度を改善することが可能である. また,近頃CDF実験でトップクォーク対生成事象においてトップクォーク・反トップクォークに予想よりも大きな前後方非対称の存在が示唆されているが,トップクォーク・反トップクォーク対の間のスピン偏極度相関の測定は,この前後方非対称を調べるにあたって別の面からの情報を与えることができる.統計量としては依然として不足しているもののスピン偏極度相関測定結果がCDF実験において初めて出されたことは非常に高い意義を持つ.
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