PACS-CS Collabolationとの共同研究で、現実のクォーク質量を用いた、アップ・クォーク、ダウン・クォークとストレンジ・クォークの動的効果を考慮した2+1フレーバーの格子QCDのシミュレーションの実現を目指した。格子作用は、O(a)改良されたWilsonクォーク作用とIwasakiゲージ作用を用いた。シミュレーションパラメーターは、格子サイズL_3×T=32_3×64、格子間隔a=0.9fm(β=1.90)、体積(La)_3=(2.9fm)_3である。到達できたパイオン質量は155MeVで、先のCP_PACS/JLQCD Collabolationの600MeVに比ベると大きな進展である。これにより現実のパイオン質量135MeVへのカイラル外挿による系統誤差をほぼ取り除くことが出来、信頼ある物理量(ハドロン行列要素等)の計算が可能になる。ただし更なる系統誤差として、有限格子間隔と有限体積効果によるものがあるが、これらは平成21年度以降に調べる予定である。また、QCDの低エネルギー有効理論であるカイラル摂動論との比較を行った。これにより格子QCD計算が、カイラル摂動論でコントロール可能かどうかを調べつつ、QCDの基本パラメーターであるクォーク質量の決定を行った。さらに軽いハドロン質量スペクトルの格子QCD計算が実験値をほぼ再現することを示した。これは、格子QCD計算に要請される最も重要は項目であり、今後の物理量計算の基礎になる重要なデータを得たことになる。
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