PACS-CS Collabolationとの共同研究で、リウェイティング法を用いて物理点上のシミュレーションを実行し、ハドロンスペクトラム等の物理量がほぼ実験値を再現することを示した。またQCDの基本パラメーターであるクォーク質量の決定を行った。これらは、今後の物理量計算の基礎になる重要なデータを得たことになる。これにより現実のクォーク質量を用いた、アップ・クォーク、ダウン・クォークとストレンジ・クォークの動的効果を考慮した2+1フレーバーの格子QCDのシミュレーションが可能であることが分った。 先のCP_PACS/JLQCD Collabolationのパイオン質量600MeVに比べると大きな進展である。これにより現実のパイオン質量135MeVへのカイラル外挿による系統誤差を取り除くことが出来、信頼ある物理量(ハドロン行列要素等)の計算が可能になる。ただし更なる系統誤差として、有限格子間隔と有限体積効果によるものがあるが、これらは平成22年度以降に調べる予定である。 また、興味ある物理量(ハドロン行列要素)して核子の軸性ベクトル結合定数のクォーク質量依存性を調べた。いくつかのグループが調べているが、統一的な結論がない。やはり物理点近傍での解析が重要になってくる。最終結論を出すには更なる統計が必要で、平成22年度以降の課題である。
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