宇宙では、様々なスケールの物理現象が互いに影響を及ぼしながら絶えず起こっている。その中でも、最も壮大なスケールの物理を対象とするのが宇宙論であり、最も基本的な最小スケールの物理が素粒子物理そして超弦理論であると言えよう。弦理論的宇宙論は、最小スケールの物理を記述する超弦理論を用いて宇宙論の謎に迫る試みであり、近年急速に発展している分野である。本研究の目的は、超弦理論によって宇宙より深い理解を得ることである。 具体的には、(i)インフラトンが時空曲率と共形結合する模型の予言と観測データとの比較、(ii)宇宙論的摂動の非線形発展方程式の定式化、(iii)崩壊するDブレーン上の開弦の自由度を記述する場の理論の研究、(iv)QGP実験の状況に双対なブラックホール時空の構成、等をおこなった。 それぞれの研究は、以下の意義・重要性を持つ。(i)共形結合をもつブレーンインフレーションの理論を、観測から制限することを可能にする。(ii)DBIインフレーション等の生じる、揺らぎの非ガウス性の発展を解析するのに有効である。(iii)ブレーンインフレーションはDブレーン・反Dブレーン対の崩壊・消滅によって終わるが、非一様に崩壊が進む状況を理解するのに役立つと期待される。(iv)ビッグバン直後を再現すると言われるRHIcやLHCでのQGP実験を、AdS/CFT対応を用いて研究するのに役立つ。
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