宇宙では、様々なスケールの物理現象が互いに影響を及ぼしながら絶えず起こっている。その中でも、最も壮大なスケールの物理を対象とするのが宇宙論であり、最も基本的な最小スケールの物理が素粒子物理そして超弦理論であると言えよう。弦理論的宇宙論は、最小スケールの物理を記述する超弦理論を用いて宇宙論の謎に迫る試みであり、近年急速に発展している分野である。本研究の目的は、超弦理論によって宇宙のより深い理解を得ることである。 具体的には、(i)インフレーション中の軽い場の効果の解析、(ii)Gradient expansionを用いた宇宙論的非線形摂動の解析、(iii)ブラックホールに関する余剰次元の効果、(iv)新しい量子重力理論(Horava-Lifshitz理論)に基づく宇宙論、(v)ゴースト凝縮に基づく宇宙論、等についての研究をおこなった。 それぞれの研究は、以下の意義・重要性を持つ。(i)インフラトン以外の場が揺らぎを生成することで、観測によるモデルの制限が変更を受ける可能性がある。(ii)揺らぎの非ガウス性を解析する既存の方法(δN formalism)の適用限界を超えて計算可能になる。(iii)ブラックホールの情報消失問題に関する新しい知見が得られる可能性がある。(iv)新しい理論による新しい宇宙像が得られる。(V)自発的ローレンツ対称性の破れについての新しい知見が得られる。
|