研究概要 |
平成20年度はモンテカルロ殻模型法の計算コードの開発と、サマリウムアイソトープの核構造計算を主な課題とした。研究対象となる100Snや132Sn周辺の領域の核構造計算は対相関の取扱が不可欠であるため、これまでのモンテカルロ殻模型計算のプログラムにおいては、多体基底は任意のフェルミオン対の凝縮状態によってあらわされていた。本研究では、モンテカルロ殻模型の計算プログラムを改良し、得られる波動関数をHartree-Fock-Bogoliubov法で用いられるような準粒子真空基底の線形結合と粒子数射影を組み合わせた方法によって表現する方法を開発した。さらに、このような準粒子真空基底を用いることにより、モンテカルロ殻模型法において用いられる補助場の生成方法を密度分解型から対分解型へ変更することを可能とした。これにより、より少数の基底の線形結合により求めるべき状態の波動関数を表現することに成功し、計算コードの効率化に寄与した。また、平均場+粒子数、角運動量射影法を用いてサマリウムアイソトープの偶々核における中性子数増加に伴う形の相転移を変形度の大きな領域まで含めて計算することに成功した。・これにより、1主殻内の一粒子軌道と角運動量差が2となる対をもつ1主殻外一粒子軌道であるπ2f7/2, π1g9/2, v02g9/2, vlhll/2の各軌道が四重極集団運動状態の記述に重要な役割を果たすことを示した。この研究対象は、従来の殻模型計算のような1主殻計算では変形度が大きすぎて理論計算が不可能である152Sm近傍を含んでいるため、平均場を超えた枠組みを適用するためにはモンテカルロ殻模型のような1主殻を超える模型空間を取り扱える手法を必要であり、そのベンチマーク計算をおこなった。
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