平成22年度はモンテカルロ法におけるエネルギー分散を用いた外挿法を開発した。この方法では、モンテカルロ殻模型法で得られた一連の近似波動関数列のひとつひとつに対し、エネルギー期待値とエネルギー分散をプロットし、エネルギー分散が十分小さい領域において2次関数でフィットする。厳密解では、エネルギー分散は0となるから、エネルギー分散が0となる点のエネルギー固有値をフィット関数の外挿によって求め、真のエネルギー固有値を推定する手法である。実際に、中重核の殻模型計算に適用して、エネルギー固有値の精密な推定が可能であることを示した。この成果にもとづき、原著論文1件、招待講演1件を含む多数の成果報告をおこなった。 この手法を用いて、バリウム、キセノンなどの質量数130近傍への中重核への殻模型計算による微視的、かつ、より精密な研究をおこなっており、論文準備中である。この領域には非軸対称変形をおこす同位体が含まれており、集団運動状態の微視的観点からの統一的な記述をおこなっている。 また、これと並行して変分モンテカルロ法の原子核殻模型計算への応用を試みた。 この手法では試行波動関数に粒子数保存型対相関基底を用いているので、対相関の取り扱いが重要となる中重核領域での波動関数の記述に有利であり、今後の集団運動状態の微視的理解に大きく役立つと考えている。
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