本年度は、前年度に開発したプラズマ粒子法シミュレーションコードを用いて、主に垂直な背景磁場がある場合の無衝突衝撃波の形成過程のシミュレーションと、電子とイオンの温度に差がある場合に形成される静電衝撃波のシミュレーションを行った。 背景磁場がある場合のシミュレーションでは、磁場の強さを超新星残骸の場合に相当する非常に弱い値に取り、計算を行った。その結果、衝撃波の遷移層で圧縮された背景磁場に匹敵する強さの磁場がワイベル型不安定性により作られ、それにより粒子が等方的に散乱され、下流の粒子の速度分布はほぼ等方的になることがわかった。下流粒子のエネルギー分布はほぼマクスウェル分布であり、Power-law的な粒子加速は見られなかった。また、電子とイオンの下流での温度は同じではなく、電子温度はイオン温度の約40%であった。ただし、この比の値はシミュレーションで使用した電子イオン質量比(30)に依存すると考えられ、今後より現実に近い質量比でのシミュレーションが望まれる。衝撃波の下流ではワイベル型不安定性で作られた電流フィラメントが多数残り、このフィラメントにより乱れた磁場が作られることも明らかになった。また、この弱い背景磁場がある場合の無衝突衝撃波形成過程は、レーザー実験においても実験可能なパラメータであることを示した。この研究については、本年度に国際会議に於いて2件の招待講演をしたほか、論文をAstrophyslcal Journal誌に投稿中である。 静電衝撃波に関するシミュレーションでは、衝撃波上流で静電イオンーイオン不安定性が発達し、それによるイオン密度の揺らぎにより最終的には衝撃波が破壊されることがわかった。また同時にワイベル型不安定性も成長し、長時間の後にはワイベル不安定性駆動型の衝撃波が形成される可能性を示した。この研究に関する論文はPhysics of Plasmas誌に投稿し出版された。
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