本研究は、マイクロバンチ電子ビームと大強度レーザーにより作り出されるレーザーアンジュレータ場の相互作用により、コヒーレント光を発生する事が目的である。今年度は、本研究の中でも重要かつ必要不可欠な開発要素であるマイクロバンチ電子ビーム生成試験実験に向けた、フォトカソード電子銃とフォトカソードおよびビームエネルギー変調に用いるレーザーシステムの立ち上げを行った。理論考察から、空間電荷効果の影響を抑えるために出来るだけ高電圧(>250kV)での電子ビーム引き出しが必要であるが、高圧電源や電子銃の高圧碍子の耐圧などから直流100kV印加型電子銃とした。他方、電子ビーム発生とエネルギー変調には、シード共振周波数が89MHzのNd:YLFモードロックレーザシステムを使用する事とした。本試験実験では、フォトカソードに必要な4倍波のUV光(262nm)とエネルギー変調に用いる基本波のIR光(1047nm)は、同じ種光から生成するシステムとしたので相対的な時間ジッターは無く、安定して電子ビームにエネルギー変調をかける事が可能である。IR光はフラッシュランプ励起アンプを使用する事により、パルスあたり約25mJまで増幅する事に成功した。22年度初めに電子ビーム発生とエネルギー変調の試験を行う。レーザーによる電子ビームエネルギー変調に関してこれまでの考察から、電子ビームの進行方向のバンチ中央部分については空間電荷効果による電子問の斥力とレーザー電場によるエネルギー(密度)変調が、ある特定の条件でバランスできるという事が分かってきた。その他、金属メッシュを用いた電子ビームのエネルギー分析法に関する考察も進めている。マイクロバンチ電子ビーム生成に関する理論的な考察結果をまとめ、Radiation Physics and Chemistryに投稿し2009年受理・発表された。
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