研究概要 |
電子ビームとレーザー場の相互作用によりコヒーレント光を発生するためには、電子バンチの時間構造が発生する光の波長と同程度かそれ以下にする必要がある。本研究において、電子ビームのマイクロバンチ化が最も重要かつ必須の研究開発課題である。2009年に発表したRadiat.Phys.Chem.78,1112-1115では、レーザー電場を自由空間でレーザー光の波長以下に絞り、そのレーザー電場の向きと平行に電子バンチを通過させ電子ビームにエネルギー変調を与える手法を提案したが、試験実験からレーザーを波長以下に絞り込む事は困難と判断し、より安定にエネルギー変調をビームに与えるためにレーザー光を波長以下の間隔に設置した金属スリット隙間に照射し、その隙間にエネルギー変調用の電場を生成する方法を採用することにした。 本年度はレーザーを金属スリット隙間に照射し電場を生成する手法について、波長が26.3mmのXバンド(11.4GHz)高周波を用いて波長をスケールアップした形で高周波電場生成の実験を行った。まず電磁場計算によりスリット幅がλ/2の場合に隙間間に作り出される高周波電場を求めた。実験では波長に比べ十分小さいダイポールアンテナとループアンテナを使いスリット近傍に作り出された電磁場を測定した。この測定から、スリット近傍にXバンド周波数の高周波電場がほぼ計算と一致する分布で生成できていることが確認できた。波長スケールは異なるがこの実験によりマイクロバンチ化に必要なエネルギー変調用電場生成が可能であることを明らかにできたことは、マクロバンチ生成およびマイクロバンチ電子ビームとレーザーアンジュレータ場の相互作用によるコヒーレント光発生についての1つの大きなステップである。
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