研究課題
本研究では、ニュートリノ質量分光に向けて、ルビジウム原子を磁気光学トラップで捕獲し、2レーザーで準安定状態であるリドベリ状態を作る計画だったが、磁気光学トラップに比べ、はるかに多くの原子を捕獲できるマトリックス単離法を採用することにした。それに伴い、2レーザーのラダー型で励起するルビジウムの実験スキームから、2レーザーのラムダ型で励起するバリウム原子にターゲットを変更した。まず、ガスセルに封入したバリウム原子を1レーザーで準安定状態に励起する実験を開始した。バリウム原子の準安定状態への移行は、1P1-1D2遷移の1500nmを検出することで確認すことにした。ガスセルを800℃に加熱し、色素レーザーをバリウム原子の1SO-1P1遷移の554nmにチューンして照射した。1500nmの蛍光検出は、554nmのポンプレーザーを音響光学変調器でチョップし、ロックインアンプを用いて行った。この手法により、10μsめ時間で、50%の効率でバリウム原子の準安定状態を生成することに成功した。この準安定状態の生成を速めるために、さらに1500nmの半導体レーザーを照射した。これにより、1P1-1D2間の誘導放出が起こり、準安定状態への移行を1μs程度に速めることに成功した。今後、超放射現象を利用し、さらに生成高効率を高める研究を進める。また、低温の母体原子の個体にバリウム原子を埋め込むマトリックス単離法の実験も開始した。母体原子として、ゲスト原子との相互作用の小さいパラ水素分子を用いることにし、パラ水素マトリックスの研究の進んでいるブリティッシュコロンビア大学に赴き、バリウムを埋め込む実験を行った。レーザーアブレーション法により、バリウム原子を飛ばしてパラ水素マトリックスに埋め込み、吸収スペクトルの測定から、バリウム原子が10^13-10^14個/cm^3程度捕獲できていることを確認した。
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