平成22年度に引き続き (1)4台のPC+GPUを用いた格子QCDの並列計算の研究について改善を試みた。前年度に分かったこととして通信性能が安価なGigabit Ethernetでは不足する点が挙げられたが、本年度は通信プロトコルとして一般的なTCP/IPプロトコルからOpen-MXと呼ばれる少しだけ軽量なプロトコルを用いて通信を行うようにプログラムを変更し性能評価した。レイテンシーの改善により、2割ほど性能向上が見られたが、GPUの計算速度をカバーするには至らなかった。 (2)一方で前年度作成した、通信の必要がない多フレーバーQCD用のブロックソルバーを、HMC法にくみこみ、10フレーバーQCDの結合定数の計算を行った。10フレーバーQCDはテクニカラー模型の候補と考えられているが、その結合定数の計算には通常の2フレーバーQCDに比べ5倍以上のコストがかかるため困難であったが、今回の並列GPUブロックソルバーの導入により安価に計算を遂行することができた。 以上の並列GPU計算(1)、(2)とも国際会議Lattice 2010で発表を行った。また、(2)については物理的な結果である結合定数についての論文を投稿し採択されたところである。
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