本研究のテーマは大きく分けて3つにわかれる。(1)超対称ゲージ理論におけるBPSソリトンとモジュライ空間の幾何学、(2)カラー超伝導における非アーベリアン渦糸、(3)冷却原子気体における渦とソリトンである。 (1)非アーベリアン渦のモジュライ空間のケーラー計量を、渦間距離が十分に離れている場合に決定した。また、逆に複数の非アーベリアン渦が重なっている場合の、モジュライ空間の部分空間を決定した。さらに、非アーベリアン・モノポールをヒッグス相に持っていくことによって、キンクとの対応を発見し、対称性の残った相のモノポールのドナルドソン有理写像構成法と一対一に対応することを証明した。 (2)カラー超伝導における渦糸の世界面の有効理論を前年度に決定したが、ストレンジクォークの質量の効果を取り入れ、古典的にはモノポールが存在しないことを示した。さらに、世界面の量子効果を取り入れることで、非摂動ポテンシャルを求め、この相で量子モノポールが閉じ込められていることを示した。通常の閉じ込め相ではモノポール凝縮でクォークが閉じ込められていると考えられているが、高密度のカラー超伝導相ではクォーク凝縮でモノポールが閉じ込められていることを示したという意味である種の双対性を示唆している。また、渦糸上に非アーベリアンなマヨラナ・フェルミオン・ゼロモードを発見した。 (3)2成分のボース・アインシュタイン凝縮において、Dブレーン解を構成した。スピンが2のボース・アインシュタイン凝縮の液晶相において、擬南部・ゴールドストーン・ボソンが存在することを発見した。この相には、いくつか異なった対称性の相が縮退していることが知られていたのだが、その現象を幾何学的に理解できるようになった。また、古典的に不安定であるが量子論的に安定な渦を発見した。
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