1. 反ド・ジッター時空を背景に持つ重力理論と共形対称性を持つゲージ理論との等価性を主張するAdS/CFT対応は、近年弦理論の分野で最も盛んに研究されているテーマである。特にこの5年ほどの間に、2次元可積分模型の理論を用いることでAdS/CFT対応の予想が非常に精密に検証できるようになってきた。日本物理学会誌の記事ではこのAdS/CFT対応の最近の発展と可積分模型とのかかわりについて、最新の成果まで含めた解説を行った。また、AdS/CFT対応の舞台である弦理論、超対称ゲージ理論双方において、弱結合領域における一般解を構成し、任意の解についてAdS/CFT対応を確立した研究代表者の過去の研究に基づき、学会講演にて解説を行った。 2. 二つの異なる場の理論同士を隔てる境界はインターフェースと呼ばれる。中でも2次元共形場理論のインターフェースとして現れる共形インターフェースは、共形場理論における境界、欠陥(defect)の一般化にあたり、近年脚光を浴びている。この共形インターフェースを介して接する二つの共形場理論のあいだの相関の度合いを表す指標として、エンタングルメントエントロピーを求めた。最も基本的なc=1共形場理論においては、インターフェースが透過性パラメータを持ち、エンタングルメントエントロピーにもパラメータ依存性が現れる。数値計算を用いて近似的にこの依存性を求める試みが過去にあったが、我々は初めて解析解を得ることに成功した。
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